『ネットの暴力を許さない』指導用テキスト


1.教師・保護者のみなさんへ


 まず、指導に当たる上で、みなさんに理解していただきたのは、家庭や学校生活の中で、子どもたちには言葉にできない思いがあり、自由に自己表現したり、他人と関りを持ちたいという欲求があるということです。

 プロフや掲示板など、携帯のインターネット空間は、子どもたちにとって、日常生活の中では表現できない思いや気持ちを解放できる場所になっています。つまり、それだけ、普段の生活の中で、子どもたちは、自分たちの言いたいこと、思っていることをストレートに表せていないのです。

 つまり、日常生活の逃げ場として、子どもたちにとって、携帯空間があり、大人が思う以上に、それを抑止するだけの力や魅力が、日常生活に欠けているといえるのです。

 ですから、トラブルに巻き込まれる危険を伝えるだけ、あるいは、禁止するだけでは、プロフや掲示板を使ったトラブルを止めることはできないということを、まず、理解していただきたいと思います。

 必要なのは、子どもにプロフや掲示板へ逃げ込ませない、日常の環境を整えることです。強い心を育てることです。

 そのためには、いじめはいけない、携帯を使ったいじめは卑怯だと批判するだけでは、問題の解決にはなりません。

 子どもたちのプロフや掲示板を利用してしまう気持ちを否定せず、その気持ちによく耳を傾け、その心を理解した上で、使い方、利用の仕方一つで、人を傷つける凶器にもなるものだということを根気よく伝えていくことが大事です。

 そして、子どもたち自身に問題意識を持たせ、自由な議論、話し合いの中で、その解決策を大人と一緒に考えていくことが、最も、抑止につながるということを心に置いて、本作品を利用してください。


2.指導の要点


@最初から、強い悪意があって、ネットの暴力が始まるのではない  ことを理解させましょう。

  このドラマが描いているのは、「ちょっとした意地悪のつもり」で始めた、小さな悪意が、やがて、ネットという不特定多数に情報が流れる空間で、増殖し、肥大てしまう、怖さです。それが、小さな悪意を持った人間の予想を越えて、人を死にまで追いやるほどの凶器となることです。

 つまり、学校生活の中での些細な行き違い、勘違い、思い込みをきちんと学校生活の日常の中で、本人同士、仲間同士で、直接、会話して、解決せず、ネットに発信してしまう弱さが問題を大きくしてしまうという自覚を子どもたちに持たせることが大事なのです。


Aいじめをしている人間を批難するだけでは、問題の解決にならな  いことを理解させましょう。

 ネットだけでなく、普段の学校生活でのいじめも同じですが、犯人探しをして、誰かを批難し、処分するだけでは、いじめそのものを学校、教室の中から消し去ることはできません。それ自体が、再びいじめを呼ぶからです。

 いじめには集団心理が大きな影響を与えます。誰かが犯人だったということが、ことさら大きく取り上げられてしまうと、周囲は、その犯人へパッシングをすることで、自分たちがいじめを止められなかったこと、自分たちも加担していたことの罪悪感を消し去ろうとします。

 これでは、新たないじめ被害者をつくるだけなのです。

 いじめをしてしまったことを批難するのではなく、どうしていじめが起きてしまったのか。クラスの人間関係、これまでのいじめ防止教育の問題点を冷静に検討し、いじめを生まないために、みんながどう行動すべきかを自覚させることが大事だということを伝えましょう。


Bいじめはみんなの問題だという自覚を育てましょう。

 いじめは、被害者と加害者だけの関係だけで起きているのではありません。加害者の仲間、加害者と同じように、いじめを楽しんでいる観衆者がいることが、いじめをより大きいものにし、かつ、加害者意識を希薄にします。

 また、傍観者として、いじめを知りながら、それがよくないことだと意志を表さず、無言でいることで、関らないようにする人間がいることで、被害者から救済の糸口を奪っているのです。

 つまり、周囲ではやし立てたり、おもしろがる人間、自分には関係のないこととして、被害者を見捨てる人間も、いじめに関わっており、その自覚が観衆・傍観者に生まれなければ、いじめを抑止することは難しいのです。

 加害者批判だけで幕引きをしてしまうと、この観衆・傍観者である子どもたちに反省と自覚を促すことができません。いじめはみんなの問題であることを提起し、子どもたちに話し合いを持たせましょう。


C情報に振り回されない心を育てましょう。

 いま中学生の悩みで一番多いのが、人間関係の悩みです。少子化や地域の子どもたち同士のふれあいが少ないこともあり、幼少の頃からたくさんの友人、知人に囲まれて育つ環境の少ない、現在の子どもたちは、他人とのコミュニケーションに臆病です。

 また、親子関係がうまくいってない子どもも多く、親とすら、会話をしないという子どもも少なくありません。

 それが、直接、顔を合わせて会話すればいいことでも、メールを使い、軽さを演出して、自分も相手も傷つかないように、心を砕く、臆病さになっています。正面切って、思ったことを口にすると、何か問題が起きたときにどう修復していいかの知恵が育っていないからです。

 一方、家庭や学校生活の中で、大人が思う以上に、子どもたちはストレスを感じています。進学のこと、成績のこと、将来のことといった問題を常に家庭や学校で意識させられ、安心した時間を過ごすことが少なくなっています。

 また、携帯を始め、テレビ、雑誌など、多くの情報に無防備にさらされているため、一つの噂、情報に振り回されてしまう弱さも持っています。

 他者とうまくやれるかどうかに常に不安を抱いている状態で、一つの噂を耳にすると、自分が見ている他者の本当の姿は、そこにあるのではないかと噂を真に受けてしまう幼稚さがあるのです。

 また、普段からストレスを抱えているために、それを発散できる対象をみつけると、一気にその対象へ、日頃の鬱憤をぶつけるようになります。

 実際に自分が見たことでもないのに、あたかも見たかのように、他人を批判したり、誹謗中傷してしまうのです。

 そうした、子どもたちが置かれている生活の現状を子どもたち自身に自覚させ、情報に振り回されて、ネット上で、おもしろがるような書き込みや中傷をすることが、後々、自分自身の不利益にもなり、傷つくことになることを伝えましょう。


3.視聴後の話し合いのポイント

  ドラマの進行に従って、自由に意見を述べさせましょう

@まず、「真理江が佐智子への嫉妬心から、軽い気持ちでプロフに嘘   の書き込みをしたことをどう思うか」を話し合います。

 ・どうして、プロフやブログのランキングが気になったのか。
 ・真理江は、なぜ、嫉妬心から嘘の書き込みをしてしまったのか。
 ・どんな人が、ネットのプロフや掲示板に悪口を書くのか。

 次に、それが思わぬネットの暴力になった理由を考えます。

 ・知らない人まで書き込むようになるのは、どうしてか。

A次に、加害者だった真理江が被害者になっていったことをどう思うか  を話し合います。子どもたちに、加害者だけの問題だったのかという
  気づきを持たせるようにします。

 ・真理江が加害者になっていく様子を見て、どう思ったか。

B次に、出演者の意見を聞いて、どう感じたかを中心に意見を述べさ
  せます。自分たちの中にある、いじめの因子に気づきを持たせ、いじ  めに行かない心をつくるために何が必要かを考えさせます。

 ・登場人物は、自分たちと比べてどうだったか。
 ・プロフや掲示板に悪意の書き込みをしないために、何が必要か。
 ・いじめていた人だけを悪者にしていいのか。
 ・いじめをしないクラスをつくるために、自分たちは何をすべきか。

                                  以上。

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